年数が経ったときに、メンテナンス費用こうした椎名さんの熱意が実ってか、一回目の更新時期を迎えて全世帯が契約を更新しました。
ルネス・シーナは我孫子駅まで徒歩十五分、決して便利とは言えませんが、駅前に新しいマンションが建っても移る人はいませんでした。
これまでに退去したのは三世帯。
それも転勤や、自宅を新築するために最初から仮住まいを前提に入居した人など、やむを得ない事情。
空いたあとはすぐに埋まってしまいました。
りました。
ところが一年後にまた京都に転勤が決まってしまった。
たまたま私は退去に立ち会えませんでした」立ち会った仲介会社の女性に、その奥さんは「こういう物件、京都にもないでしょうかね。
ものはいっぱい入るし、子供も音を気にせずに遊ぶことができる。
私は、本当は離れたくないのです」と言って、涙を流していたといいます。
それを聞いて「嬉しくなってしまいました」と椎名さん。
オーナー冥利に尽きる話ではありませんか。
と。
お抱えだと、どうしても建築会社さんにくっついてしまう。
すこと。
お抱童と手厳しい指摘。
最後に椎名さんの経験にもとづいて、これから建てる方へのアドバイスを列挙していたいではいけない。
自分が楽だから建築会社さん任せにするという安易な考えもダメ。
家賃収入の管理から支払計画まで自分で立てるマンション経営をやるなら、それぐらいの覚悟が必要です。
でなければ、信頼して任せられる人を自分で探すことですね」実に的確な指摘です。
自分で考え自分で悩み、遠回りこそしたかもしれませんが、自分がこだわった工法(床下収納)にめぐり会い、周囲の専門家の力も引き出して、自分が納賃貸経営のジレンマ得できるマンションをつくり上げた椎名さん。
ご本人は意識していらっしゃらなかったのかもしれませんが、この経験には「賃貸経営のジレンマ」を解消する重要な糸口があります。
前章でご紹介した椎名たえ子さんの事例は、実に示唆に富むものでした。
ここに端的に表れているのが「入居者はお客さま」の言葉ですし、「入居者の身になってマンションを建てる」という考え方です。
こうした発想が必要とされるようになった背景を、もう一度別の角度から確認してみましよう。
従来の賃貸住宅は、入居者にとってほとんどの場合はいずれ家を建てるか分譲マンションを購入するまでの仮住まいでした。
一生住むわけではありませんから、あまり真剣に選択することもない。
しかも、基本的な性能の違いについても、たとえばA社の商品とB社の商品とを実感できるレベルで比較することはむずかしかった。
どうせ大差はないという感覚も強かったのが現実です。
賃貸経営のジレンマつまり、供給過剰で入居者の選択肢が極めて増大するとともに、何を求めるかという価値観も変化し多様化していると言えるのです。
結論から言えば、こうした入居者のニーズに対応しなければ、賃貸住宅経営は生き残っていけないのです。
もう一時的な「オーナー収益の最大化」だけを主眼にするのではなくて、別の発想に転換するべきです。
それがこれから申し上げる「収益最大化からリスク最小化」への転換であり、ジレンマ解消の糸口になると思うのです。
ところが前述したように、賃貸住宅市場は貸し手市場から借り手市場になってしまった。
すでに供給過剰なのに、どんどん新築物件が供給されています。
すると、駅からの距離、家賃などの条件面がさほど変わらないならば、設備がよくて外観がきれいな新しいマンションのほうがいいと考えるのは当然です。
また一方ではバブル崩壊後、若い世代を中心にして賃貸永住派という言葉が出始めています。
資産デフレの時代ですから一生賃貸住宅でもかまわないと考える人が確実に増え始めています。
永住の場だとすると、単なる家賃の高低だけではなく賃貸住宅の基本的な性能、あるいは付加価値が入居者にとって非常に大事になってきますこれは「出し抜き戦略」はもう通用しないということも意味します。
オーナーと入居者の利益がぶつかり合う。
そこで片方がうまく相手を騙して、自分一人がいい思いをするという戦略ではダメなのです。
確かに建設コストをおさえて高い家賃を設定できれば、ハイリターンになると計算できるかもしれませんが、事実上、事業としてはハイリスクになってしまいます。
そうではなく、ミドルリスク・ミドルリターンをめざすことが、現実的にはオーナーの収益を最大化させると言えるでしょう。
もともとアパートやマンション経営のメリットは、リスクが低いことにあったはずです。
その原点に立ち返ろう、と私は言いたいのです。
まして変動の激しい世の中です。
いまや、あらゆる業種でリスクマネジメント(危機管理)の重要性が叫ばれている時代です。
投資戦略を考える際には、「将来の危機をどう管理するか」という視点は必要不可欠の存在になってきています。
そこで「リスクの最小化」をどうすれば達成できるかを、次に検討してみたいと思います賃貸経営で「リスクの最小化」を実現するためには、「空室率をいかに最小化するか」と、低く、しかも家賃が下がらなければ、リスクの最小化という目的は達成することができるからです。
そこでもう一つ、空室率に関して発想の転換を提案したいと思います。
ご存じのように空室率は、退去者数をどう減らす?常識でした。
で表せます。
ここで問題になるのは、従来は「空室期間をいかに短くするか」が賃貸経営を考える上でのポイントだったことです。
というのは、入居者にとって賃貸住宅は所詮仮住まいだったからです。
いわば「入った人はいずれ出ていくのが当たり前」というのがこの常識の背景には、斡旋する仲介業者からすると「退去者数は多いほうがいい」という、賃貸住宅業界に特有の事情もありました。
極論すれば、どんどん退去してすぐに入ってもらう、回転をよくしたほうがオーナーの収益も向上するのです。
オーナーは入退去の数だけ敷金・礼金を手にすることができるわけですし、業者は原状回復に伴う修繕・補修で小銭を稼ぐこともできます。
つまり退去者数を多くして、いかに空室期間を短くするかが仲介業者にとって腕の見せどころだったのです。
いまは、そういう「腕のいい不動産屋さん」でもなかなか空室期間を短くできないのが現状です。
かつては非常に閉鎖されたマーケットでしたから、努力しないエンドューザーは情報量が少なかった。
腕のいい仲介業者や管理会社は、圧倒的な情報量で入居者を説得することができました。
しかし、もう情報化の世の中です。
入居者の情報量は飛躍的に向上しました。
インターネットで、自分の力でいい物件をいくらでも探せる時代ですし、選択肢も増えましたから、空室期間を短くすることは非常に難しくなってしまっているのです(前ページグラフおよび表参照)・と言うことは、空室率を最小化するためには「退去者数をどう減らすか」に発想を転換しなければなりません。
そして、退去者を減らすためには「いかに出にくい物件をつくる退去の原因には、大きく分けて三つあります。
一つは、戸建てや分譲マンション購入にともなう退去です。
二つ目は、退去せざるを得ない事情。
たとえば転勤がありますし、子供の教育を考えていい学校に入れるために移転しなければならないことがあるでしょう。
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